1964年
6月21日(対国鉄)
 昨夜リリーフの金田から三振を喫したが、また今晩の対決である。
 打撃練習では今まであまりにもステップが大きく、そのため腰の回転が出来なかったのと、タイミングを外さ
れるので今日はボールを引き付けて、体を前に出さないで回転だけで打つようにと注意した。
 練習では素晴らしい当たりがボンボン出てゲームになって打てれば良いがと心配した。
 本人は今までより体重がずっと後ろに残るので、こんなに体重が残ってよいのかと心配していたが、バ
ットの先が体より前に出れば良いのとどんな型でも気が前に出ること、重心の安定さえあれば大丈夫だ。
 ゲームになって初回金田からワンスリーのあと真ん中のボールを右中間よりの上段に叩き込んだ。
 30号目はツーワンから外角球のストレートをセンターに叩き込み、これで金田から今シーズン7本のホ
ームランを打ち、完全に金田から打ち勝ったような気がする。
 今まで王は投手によってタイミングが合うのと合わない投手とがあり、合わないといったら徹底して手が
出ない。
 極端にいうと昨年タイミングが合っていた投手でも今年は合わなかったりで、どんな投手が出てもタイミ
ングが合うようになったら初めて打率が3割5分以上打てるのだが、まだ研究する余地がある。
 王の場合遠征に来るとバットスイングの時間はあるが、東京の場合はどうしても忙しくてバットスイング
に来る暇がないのが残念だ。
 私との約束は3年間であり、その3年目が一番成績が良いのだが、それとは逆に習いに来る率が悪くな
っている。
 だんだん技が上達するのだから、習いに来る率が悪くなってもしようがないが、王が選手生活最後まで
一流スターでいたいのなら、どんなことがあっても毎日の稽古が大切である。
 ある記者が王はこのごろ天狗になっているのではないかと忠告してくれたが、これには心配ないと思う。
 私の心配することは王があまりにもマスコミから騒がれることで、自分自身の稽古の時間を少なくしてい
ることである。
 王に願うのは野球が上手くなければマスコミもファンも拍手してくれないのだから自分自身の実力を養う
ことが大切である。