1964年
5月19日(対中日)
 例の通り試合前にバットスイングに来た。
 広岡も一緒の部屋なのでスイングを見学した。
 まず姿勢からいくと、構え(スタンス)が今までよりいくぶん狭くなり、一見なにか頼りなさを感じさせるのではないかと思うが、王の場合は狭過ぎるほど良い。
 従来一本足打法は二本足で打てる姿勢から一本足になる。
 二本足から一本足になるときに体の移動があるから、その移動のときにスタンス広ければ広いほど一本足になるときに姿勢が崩れやすい。
 だからスタンスは出来るだけ狭い方が良いのだ。
 これによって多少フォームに頼りなさを感じることは、上体の構えがまだ硬いようなときがあるからである。
 また、顔の向け方にも疑問がある。
 投手の方へ顔を向けたときに自然に向かず、なにか下から上へひねりながら向いているような感じでちょっとぎこちなさがある。
 スイングも立て振りが少なく、レベルスイングになってきた。
 これは試合のときにレベルで振れれば良いのだが、いざ試合になると下から出るので、やはりもっと上からバットを握った方が良い。
 またレベルスイングをしようと思うと、横なぐりになるのも欠点だ。
 いざ試合になったらその欠点が出て、バットが横なぐりになり、どうしてもポイントが近過ぎたような感じがした。
 1試合や2試合打てなくとも良いのだが、基本だけは忠実にやるよう心掛けないと、ちょっとした自分の油断から大きく崩れることがあるから注意しなければいけない。
 名古屋のお母さんが来たので、すぐ会いに行くと言って、夜のスイングはしなかった。
 明日の誕生日もあるので、京都の稲荷さんの帰りにお母さんが寄ったらしい。
 王も親孝行だから良い。本当にうらやましい親子だ。