1964年
4月12日
 4月3日以来、王のバットスイングを見ない。
 調子は割合良いのだが本人も打率の良いときは熱心にバットを振りに来ない。
 この悪い癖があるうちはまだ一人前になれない。
 逆に言えばこの悪い癖があるうちはまだ伸びるということになるかもしれない。
 今年こそ三冠王かと私自身期待しているのに、当の本人は案外のんびりして来年、再来年もあると思っているらしい。
 ゲームの成績では村山投手が良かったといえばそれまでだが、自分がベストコンディションだったらもっと打てたと思う。
 相手投手が良かったから今日は打てなかったでは済まされない。これが一流打者の宿命である。
 今日外角のボールをポイントの前で打つことが出来ず、レフトの凡フライに終った。
 結果としては凡フライだが、塀ぎわすれすれが2本あった。王の快心の当たりだった。
 レフトであろうがセンターでもホームランになるのが当然である。
 昨年より4本損をしているが本人がバットスイングを怠けているのだから自業自得である。
 バットスイングというものは日々の修練であって、これをやって今日打てるとか、明日打てるとかいう問題ではない。
 日々の修練の積み重ねによって技を磨き、また心も磨かれ、それが自然とゲームにあらわれ出てくるのである。
 野球選手の間はシーズンオフでもバットスイングをするのが当たり前なのである。
 王はこれを怠けているのだから今年はなんのタイトルを取れなくても仕方がないと思う。
 私から注意するのは分かっているが、本人がその気になるまでは絶対にバットスイングに来るようにとは言わないつもりだ。